日本触媒

第62回ペプチド討論会にてポスター発表を実施しました。【葉酸修飾ペプチドの合成;4級アンモニウム塩を使った難溶性プテロイン酸の新規カップリング法の開発】

2025年10月21日~23日に福岡国際会議場で開催された第62回ペプチド討論会においてポスター発表を行いましたので、抄録に掲載した内容をご紹介いたします。

演 題葉酸修飾ペプチドの合成;4級アンモニウム塩を使った難溶性プテロイン酸の新規カップリング法の開発
演 題(英)Synthesis of Peptides Bearing Folic Acid from Insoluble Pteroic Acid via a Novel Coupling Method Using Quaternary Ammonium Salts
発 表 者株式会社日本触媒 健康・医療事業推進本部 健康・医療研究開発部
朝比奈 雄也/Yuya Asahina、宇津木 雅之/Masayuki Utsugi

がん細胞はその表面に葉酸受容体を過剰発現していることが多く、これを標的としたドラッグデリバリーシステム(DDS)は、医薬品の有効成分をがん細胞へ選択的に届ける手段として注目されています。このDDS機能を有効成分に付与するためには、葉酸を効率的に導入する方法が必要です。

葉酸の導入には、①葉酸を直接導入する方法、②グルタミン酸残基とプテロイン酸を段階的に組み立てる方法の2つがあります。
前者では、葉酸分子内のグルタミン酸α位およびγ位に2つの反応性カルボキシ基が存在するため、選択的な結合反応の制御が困難です。
一方、後者の段階的合成法では、保護基を導入したグルタミン酸誘導体を用いることで選択的な結合設計が可能です。しかし、プテロイン酸の極端な難溶性が大きな障壁となり、合成中のカップリング反応どころか、ろ過操作ですら困難でした。

本研究では、こうした課題を克服するために、難溶性プテロイン酸の新規カップリング法を検討し、第4級アンモニウム塩を用いたユニークな反応条件を確立しました。この手法を用いて、我々は、siRNAデリバリー用DDSツールとして設計された葉酸修飾カチオン性ペプチド「Fol-Dab8(Fol-α-Gly₃-Dab₈-NH₂)」[1]の合成および製造に成功し、その有効性を実証しました。

[1]Maeda, Y., Iwata, R., Wada, T. (2013) Bioorg. Med. Chem., 21, 1717-1723.

関連資料:siRNAのDDS技術(がん組織)日本語版 / English Ver.

討論会名第62回ペプチド討論会
主 催日本ペプチド学会
会 期2025年10月21日(火)〜 10月23日(木)
会 場福岡国際会議場
公式サイト第62回ペプチド討論会